Observeとは?|何を見て何を見落としているのか。

前の記事では、「空・雨・傘」の例を使い、Observe、Orient、Decide、Actがどのようにつながるかを確認した。

ここからは、四つの要素を一つずつ見ていく。最初はObserveである。

前の記事「OODAループの具体例|『空・雨・傘』で4つの流れを理解する」を読む

Observeとは、展開している状況、外部から入る情報、自分と環境との相互作用を通じて、いま起きていることや変化を捉える働きである。

「観察」と聞くと、目の前をじっくり眺めることや、できるだけ多くの情報を集めることを想像するかもしれない。

しかし、ボイドのOODAループにおけるObserveは、それだけではない。変化し続ける状況の中で、自分と環境の関係を捉え、次に考えるための情報を受け取る働きである。

この記事でわかること

  • Observeの基本となる三つの情報源
  • 決定や行動の結果が、次のObserveへ戻る仕組み
  • 信号の例では、何がObserveに当たるか
  • 見たことと、自分が考えたことの違い

ボイドの図はObserveをどのように描いているか

ボイドの最終的なOODAループ図では、Observeの部分に「Observations」と書かれた円が置かれている。

Orientには五つの要素が描かれているが、Observeの円の内部には、それと同じような構成要素は描かれていない。

その代わり、Observationsへ直接入る基本となる三つの情報源が示されている。

  1. 展開している状況(Unfolding Circumstances)
  2. 外部情報(Outside Information)
  3. 環境との展開している相互作用(Unfolding Interaction With Environment)

ここでいう三つは、Observeに関係するすべての矢印を数えたものではない。外部や環境からObservationsへ入る、基本的な情報源である。図にはこのほかに、決定や行動の結果がFeedbackとして戻る経路も描かれている。

また、この三つは確認項目として完全に分かれているわけではない。一つの出来事が、二つ以上に関係することもある。

重要なのは、Observeが単に「外を見る」ことではなく、動いている状況、外から入る情報、自分と環境との関係を捉える働きとして描かれていることである。

🔍 Observeでは、静止した一場面を見るのではない。変化する状況の中で、自分がいまどこにいて、環境とどのような関係にあるかを捉える。

Observeの基本となる三つの情報源

1.展開している状況

状況は、一枚の写真のように止まっているわけではない。時間とともに変化し続けている。

Observeでは、「いま何があるか」だけでなく、「少し前から何が変わり、これからどちらへ動こうとしているか」を捉える。

たとえば、歩行者用信号が青く点灯しているだけなら、一つの状態である。青信号が点滅し始めたなら、状況が次の段階へ移ろうとしている変化である。

そのため、Observeでは次のような違いに気づく必要がある。

  • 信号が青から点滅へ変わった
  • 雨が先ほどより強くなった
  • 予定の時刻が近づいている
  • 自分と目的地との距離が縮まっている

Observeとは、目の前にあるものを見るだけでなく、状況がどのように展開しているかを捉えることである。

2.外部情報

外部情報とは、自分の外側から入ってくる情報である。

私たちは、目で見るだけでなく、音を聞き、においを感じ、周囲から伝えられる情報を受け取っている。標識、警報、時刻、天気予報、周囲の動きなども外部情報に含まれる。

信号の場面では、次のような情報が入ってくる。

  • 歩行者用信号の色と点滅
  • 音響信号の音
  • 横断歩道の長さ
  • 車両用信号や車の流れ

ただし、外部情報を多く集めればよいわけではない。いまの状況や次の行動に関係する情報へ気づくことが大切である。

3.自分と環境との相互作用

私たちは、環境を外から眺めているだけではない。その中にいて、動きながら環境と関わっている。

自分が進めば横断歩道までの距離は縮まり、立ち止まれば位置関係は変わらない。路面が濡れていれば歩きやすさが変わり、疲れていれば普段と同じ速さでは動けないかもしれない。

Observeでは、外側の状況だけでなく、次のような自分と環境との関係も情報になる。

  • 自分は横断歩道からどれほど離れているか
  • どのくらいの速さで近づいているか
  • 路面は歩きやすいか
  • 自分の身体は普段どおりに動けるか

同じ点滅信号を見ても、横断歩道のすぐ手前にいる人と、まだ離れた場所にいる人では、環境との関係が異なる。Observeは、この違いも捉える働きである。

三つの情報源に加え、結果もObserveへ戻ってくる

ボイドの図では、基本となる三つの情報源とは別に、DecideとActからObserveへ「Feedback」と書かれた矢印が戻っている。

これは、決めたことや実際に行ったことによって生じた変化も、新しい観察の材料になることを示している。

信号の前で立ち止まれば、その後に信号が赤へ変わり、車が動き始める様子が見える。その変化を再びObserveし、次に考えるための情報を得る。

つまり、Observeは最初に一度だけ行うものではない。

決定や行動のあとに生じた変化も、次のObserveになる。

この基礎記事では、まずこの関係を理解すればよい。

信号の場面に当てはめる

ここまでの内容を、歩行者用信号が点滅し始めた場面に当てはめてみよう。

図に示された内容信号の場面で捉えること
展開している状況青信号が点滅へ変わり、まもなく次の状態へ移ろうとしている
外部情報信号の表示、音、横断歩道の長さ、車の流れが入ってくる
環境との相互作用自分の位置、歩く速さ、路面や身体の状態によって、横断歩道との関係が変化している
決定・行動からのフィードバック止まる、進むなどの行動後に、信号や車の流れ、自分の位置がどう変わったかを再び受け取る

この場面でObserveに当たるのは、単に「信号を見た」ことだけではない。

信号が点滅へ変わったこと、周囲からどのような情報が入っているか、自分が横断歩道とどのような位置関係にあるかを捉えるところまでがObserveである。

ただし、ここではまだ「渡る」「止まる」とは決めていない。Observeは、次に状況を意味づけるための材料を受け取る働きである。

見たことと、考えたことを分ける

Observeを理解するうえで大切なのは、確認できたことと、そこから自分が考えたことを分けることである。

信号の例では、次のように整理できる。

確認できたこと自分が考えたこと
歩行者用信号が点滅し始めたもうすぐ赤になる
自分は横断歩道の手前にいる今からでは渡り切れないかもしれない
路面が濡れている走ると滑るかもしれない

左側は、目や身体を通じて確認した情報である。右側は、それらの情報を結びつけて生まれた予想や評価である。ここからOrientの働きが始まる。

考えることが悪いわけではない。大切なのは、自分の考えを、最初から確認済みの事実だと思い込まないことである。

Observeを確かめる四つの問い

日常の中でObserveを意識するときは、次の四つを自分に問いかけるとよい。

1.状況はどのように変わっているか

現在の状態だけでなく、少し前から何が変化したかを確認する。

信号の例なら、「青信号だった状態から、点滅へ変わった」である。

2.外からどのような情報が入っているか

目で見たものだけに限らず、音、時刻、表示、周囲の動きなどを確認する。

すべてを集めるのではなく、いまの状況に関係する情報へ注意を向ける。

3.自分と環境との関係はどうなっているか

自分の位置、速さ、身体の状態と、周囲の環境との関係を確認する。

同じ出来事でも、自分がどこにいて、どのような状態かによって意味は変わる。

4.どこからが自分の考えか

確認できたことと、自分が加えた予想や評価を分ける。

「信号が点滅した」は確認したことであり、「まだ間に合う」「もう間に合わない」は意味づけである。

✍️ 次に信号を渡るとき、「何が変わったか」「外から何が入っているか」「自分と環境はどのような関係か」「どこからが自分の考えか」を一度だけ意識してみよう。

Observeだけでは行動は決まらない

信号が点滅したことに気づいても、全員が同じ行動を選ぶとは限らない。

同じ情報を受け取っても、その情報をどのように意味づけるかによって、次の決定は変わる。

Observeで受け取った情報に意味を与え、「いまは自分にとってどのような状況か」と捉える働きがOrientである。

次の記事では、同じ信号の場面を使いながら、五つの要素によってOrientが形づくられ、止まる人と走って渡ろうとする人の違いが生まれる仕組みを見ていく。

まとめ

ボイドの最終図では、Observeは単なる「見ること」として描かれていない。まず、基本となる三つの情報源が示されている。

  • 展開している状況を捉える
  • 外部から入る情報を受け取る
  • 自分と環境との相互作用を捉える

さらに、決定や行動の結果もFeedbackとして戻り、次のObserveの材料になる。

Observeとは、あらゆる情報を集めることではない。

変化し続ける状況の中で、外から入る情報と自分と環境との関係を捉え、次に意味づけるための材料を受け取り続ける。それがObserveである。

次に読む

観察の働きが分かったら、受け取った情報を意味づけるOrientの解説へ進もう。これは各要素を学ぶ順番であり、実際のOODAを固定された手順にするものではない。

参考資料

  • John R. Boyd, The Essence of Winning and Losing, “The OODA ‘Loop’ Sketch,” 1995.

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