OODAループの具体例|「空・雨・傘」で4つの流れを理解する

入門3記事の3本目。 「空・雨・傘」を手がかりに、4つの要素の違いと行動後の学びを確認する。初めて読む方は1本目の「OODAループとは?」から読むとつながりが分かりやすい。

前の記事では、同じ黒い雲を見ても、人によって受け取る意味や選ぶ行動が違うことを確認した。

今回は、その「空・雨・傘」の場面を最初から最後までたどり、Observe、Orient、Decide、Actの違いを具体的に見ていく。

見る → 考える → 決める → 動く

四つの言葉を覚えるよりも、自分ならどうするかを考えながら読む方が、OODAの流れを理解しやすい。

前の記事「Orientが中心」を読む

朝、空に黒い雲が広がっている

次の場面を想像してみよう。

  • 現在は午前7時30分である
  • 午前8時に家を出る予定である
  • 空には黒い雲が広がっている
  • 今はまだ雨が降っていない
  • 駅まで10分歩く
  • 帰宅は午後6時ごろである

このとき、あなたならどうするだろうか。

  • 傘を持って行く
  • そのまま出かける
  • 天気予報を確認してから決める
  • 移動手段や出発時刻を変える

正解を当てる必要はない。まず、自分が選びそうな行動を一つ思い浮かべてみてほしい。

ここから、その判断の中で何が起きているのかをOODAの四つに分けていく。

Observe 何を見たのか

Observeは、周囲から情報を受け取り、起きていることや変化に気づく働きである。

この場面で確認できるのは、たとえば次のようなことである。

  • 空に黒い雲が広がっている
  • 今は雨が降っていない
  • 家を出るまで30分ある
  • 駅まで歩く予定である
  • 帰宅まで長い時間がある

ここで大切なのは、確認できたことと、まだ確定していないことを分けることである。

確認できたことまだ確定していないこと
空に黒い雲があるこのあと雨が降るか
今は雨が降っていない外出中も降らないか
駅まで10分歩く歩いている時間に雨が降るか

「黒い雲がある」は、今確認できたことである。

一方、「もうすぐ雨が降りそうだ」は、見たものから生まれた予想である。ここからOrientが働き始める。

Orient 見たものをどう受け取ったのか

Orientは、見たものが自分にとって何を意味するかを捉える働きである。

黒い雲を見たとき、頭の中にはさまざまなことが浮かぶ。

  • 以前、似た空の日に急な雨が降った
  • 濡れると困る服や書類を持っている
  • 折り畳み傘なら大きな荷物にはならない
  • 傘を持って行っても、帰りに忘れることがある
  • 駅までの10分だけなら、多少の雨は気にならない

これらは、黒い雲そのものではない。自分の経験、身につけた考え方、目的、その日の予定などを黒い雲と結びつけた結果である。

さらに天気予報や雨雲レーダーを確認すれば、新しい情報が加わる。

たとえば、「午前8時ごろから雨雲が近づく」という情報を得れば、先ほどまでの見方が変わるかもしれない。反対に、「雨雲は別の方向へ進んでいる」と分かれば、傘は不要だと考えるかもしれない。

Observeで受け取った情報を、自分の経験や目的、新しい情報と結びつけ、「いまはどのような状況か」と捉えるのがOrientである。

ここでは、第2記事で説明したOrientの五つの要素が互いに影響している。五つを一つずつ思い出す必要はない。「なぜ自分には、そう見えたのか」と考えるだけでも、Orientを振り返ることができる。

Decide 何をすると決めたのか

Orientによって状況の見方ができると、次に何をするかを選べる。

今回は、次のように考えたとする。

雨が降る可能性はある。折り畳み傘なら負担も小さい。今日は傘を持って行こう。

これがDecideである。

最初は「傘を持つか、持たないか」の二択に見える。しかし、状況の捉え方によっては、別の選択肢も生まれる。

  • 折り畳み傘を持つ
  • 大きな傘を持つ
  • 傘を持たずに出かける
  • 雨雲が通り過ぎるまで出発を遅らせる
  • 車やバスへ移動手段を変える

OODAにおけるDecideは、未来の正解を言い当てることではない。

Act 決めたことを実際に行う

傘を持って行こうと考えただけでは、まだActではない。

玄関にある折り畳み傘を取り、かばんに入れ、実際に家を出る。ここまで行ってActになる。

決めたことと、実際にしたことは一致しない場合がある。

「傘を持って行こう」と決めても、玄関に置いたまま忘れることがある。出発直前に強い雨が降り始め、大きな傘へ変えることもある。

そのためOODAでは、DecideとActを分けて考える。

行動の結果が、次のObserveになる

家を出たあと、さまざまな結果が起こり得る。

  • 雨が降り、傘が役に立った
  • 雨は降らず、傘を使わなかった
  • 予想以上の大雨で、折り畳み傘では足りなかった
  • 傘は役立ったが、帰りに置き忘れた

これらの結果は、次のObserveで受け取る新しい情報になる。

たとえば、雨雲レーダーを見ても毎回傘が不要だったなら、次から情報の読み方を変えるかもしれない。折り畳み傘では足りなかった経験が残れば、似た状況で大きな傘を選ぶかもしれない。

ここで注意したいのは、雨が降らなかったからといって、傘を持った判断が必ず間違いになるわけではないことである。

判断した時点では、未来はまだ分からない。結果だけでなく、その時点で得られた情報、重視した目的、負担とリスクの釣り合いから振り返る必要がある。

行動の結果を見て、予想との違いを確かめ、次の見方と行動を変える。そこまで含めてOODAである。

実際のOODAは、四つをきれいに分けられない

この記事では違いを理解するために、Observe、Orient、Decide、Actを時間の流れに沿って分けた。

しかし、実際の人間は、毎回四つを意識し、必ず順番どおりに進むわけではない。

黒い雲を見た瞬間に過去の経験が働き、ほとんど考えず傘を手に取ることもある。決めようとしている途中で雨が降り始め、新しい情報によって行動が変わることもある。

四つに分ける目的は、人の頭の中を機械のように表すことではない。自分がどこで見落とし、どう受け取り、何を選び、実際に何をしたかを振り返りやすくすることである。

身近な判断をOODAで振り返る

今日、自分が行った小さな判断を一つ選び、次の四つを考えてみよう。

  1. Observe 何を見た、聞いた、確かめたのか
  2. Orient それを、どのような状況だと受け取ったのか
  3. Decide 何をすると決めたのか
  4. Act 実際に何をしたのか

最後に、「結果として何が起きたか」「次は何を変えるか」を加える。

この短い振り返りだけでも、普段は一つに見えている判断を、観察、意味づけ、決定、行動に分けて考えられる。

まとめ

空に黒い雲が広がっているのを見て、雨が降りそうだと捉え、傘を持つと決め、実際に傘を持って出かける。この身近な場面の中にOODAの流れがある。

  • Observe 確認できた事実や変化を捉える
  • Orient 見たものが自分にとって何を意味するかを捉える
  • Decide 現時点で試す仮説を選ぶ
  • Act 選んだ仮説を現実の中で試す
  • 次のObserve 行動の結果と予想の違いを見る

OODAで大切なのは、一度で正解を当てることではない。

見る。意味を捉える。選ぶ。実際に試す。そして、結果から次を変える。

まずは、この流れを身近な判断の中で見つければよい。

次に読む

入門3記事を読み終えたら、知りたいことに合わせて次の記事を選ぼう。

参考資料

  • John R. Boyd, The Essence of Winning and Losing, 1995, “The OODA ‘Loop’ Sketch.”
  • John R. Boyd, edited by Grant T. Hammond, A Discourse on Winning and Losing, Air University Press, 2018, Appendix “The OODA Loop.”

本記事の「空・雨・傘」とOODAの対応は、両者を同一視するものではなく、初心者がObserve、Orient、Decide、Actの違いを理解するための本サイト独自の整理である。