前の記事では、Orientを「見たものを自分にとってどのような状況か意味づける働き」と説明した。
歩行者用信号が点滅したとき、「いまから渡り始める場面ではない」と捉える人もいれば、「まだ間に合う」と捉える人もいる。
しかし、状況をどのように捉えたかだけでは、まだ次の行動は決まっていない。その見方をもとに、次に何をするかを選ぶ働きがDecideである。
前の記事「Orientとは?|意味づけがOODA全体を形づくる理由」を読む
Decideとは、Orientで捉えた現在の状況をもとに、次に何をするかを決める働きである。
この記事でわかること
- DecideがOODAの中でどのような働きをするか
- ボイドの図にある「Decision(Hypothesis)」の意味
- OrientとDecideの違い
- 同じ信号を見ても、異なる決定が生まれる理由
- Decideが次のActにどうつながるか
ボイドの図はDecideをどのように描いているか
ボイドの最終的なOODAループ図では、Decideの部分に「Decision」と書かれたひし形が置かれている。
Orientには五つの要素が描かれているが、Decisionのひし形の内部には、それと同じような構成要素は描かれていない。
図が示している基本的な関係は、次のように整理できる。
- Observeで受け取った情報がOrientで意味づけられる
- Orientでつくられた現在の見方がDecisionへ渡される
- Decisionで選んだことがActionへ渡される
つまりDecideは、OrientとActの間にあり、現在の状況の見方を、次に行うことへ変える働きである。
⚖️ Orientが「いまはどのような状況か」を捉える働きなら、Decideは「その状況で次に何をするか」を選ぶ働きである。
Decisionの下にある「Hypothesis」とは何か
ボイドの図では、Decisionの下に「Hypothesis」と記されている。日本語では「仮説」である。
これは、決定が未来の正解を完全に確定するものではなく、現在のOrientをもとに選んだ考えであることを示している。
私たちは、これから起きることをすべて知ってから決めることはできない。いま得られている情報と現在の見方をもとに、「次はこうしよう」と選ぶ。
ただし、この基礎記事では、仮説の立て方や検証方法まで詳しく考える必要はない。
まずは次のように理解すればよい。
Decideは、現時点で次にすることを決める働きである。
DecisionにHypothesisという意味が含まれる理由は、OODAをさらに深く学ぶ記事で改めて扱う。
OrientからDecideへ
OrientとDecideは近い働きであるため、普段はほとんど同時に起きているように感じられる。
しかし、振り返るときは次のように分けると理解しやすい。
- Orient:信号はもうすぐ赤になる。いまから渡り始める場面ではないと捉える
- Decide:今回は渡らず、次の青信号まで待つと決める
「渡り始める場面ではない」は、現在の状況の見方である。
「渡らずに待つ」は、その見方をもとに選んだ次の行動である。
Orientは決定の土台をつくり、Decideはその土台から次にすることを選ぶ。
信号の場面に当てはめる
横断歩道へ近づいたとき、歩行者用信号が点滅し始めた場面を考えてみよう。
ここまでの流れは、次のようになる。
| OODA | 信号の場面 |
|---|---|
| Observe | 歩行者用信号が点滅し始めたこと、自分の位置や周囲の状況に気づく |
| Orient | もうすぐ赤になる。自分はいまから渡り始める場面ではないと捉える |
| Decide | 今回は渡らず、横断歩道の手前で待つと決める |
| Act | 実際に横断歩道の手前で立ち止まる |
Decideに当たるのは、「危ないかもしれない」と感じたところではなく、「今回は待つ」と次の行動を選んだところである。
また、「待つ」という決定は頭の中で選んだ段階であり、まだ実際に止まったわけではない。決めたことを現実の行動に移すのは、次のActである。
同じObserveでも、Decideは一つとは限らない
同じ点滅信号を見ても、全員が同じ決定をするとは限らない。
前の記事で見たように、五つの要素の影響を受けたOrientが異なれば、そこから選ばれるDecideも変わる。
| 渡らずに止まる人 | 走って渡ろうとする人 | |
|---|---|---|
| Observe | 信号が点滅し始めたことに気づく | 信号が点滅し始めたことに気づく |
| Orient | いまから渡り始める場面ではないと捉える | まだ間に合う場面だと捉える |
| Decide | 渡らずに待つと決める | 走って渡ると決める |
ここでは、点滅信号を走って渡ることを勧めているのではない。
大切なのは、Observeから直接Decideが生まれるのではなく、Orientでつくられた状況の見方が、次の決定に影響するという点である。
Decideは「考え続けること」ではない
情報を集め、状況を考え続けても、次にすることを選ばなければ行動へ進めない。
Decideでは、現在の状況で取り得る行動の中から、一つを選ぶ。
信号の例なら、主な選択肢は次のように考えられる。
- その場で止まって次の青信号を待つ
- そのまま歩いて渡る
- 走って渡る
選択肢を思い浮かべただけではDecideではない。その中から「今回は待つ」と選んだところがDecideである。
日常の慣れた場面では、選択肢を一つずつ言葉にせず、ほとんど瞬間的に決めることもある。それでも、次にすることが選ばれていればDecideは働いている。
Decideは、いつでも変えてはいけないものではない
一度決めたあとでも、行動する前に新しい情報が入ることがある。
信号の例なら、止まると決めた直後に信号が赤へ変わったり、自分の前を自転車が横切ったりするかもしれない。
状況が変われば、もう一度Observeし、Orientを更新する必要がある。新しい状況に合わせてDecideが変わることもある。
これは、決めることに意味がなかったということではない。
Decideは、変化しない答えを固定することではなく、現在の状況に基づいて次にすることを選ぶ働きである。
ただし、安全に関わる決まりや法律、必要な手順を気分で変えてよいという意味ではない。Decideも、現実の条件や守るべきルールの中で行われる。
自分のDecideを確かめる三つの問い
日常の判断を振り返るときは、次の三つを問いかけるとよい。
1.自分は、いまをどのような状況だと捉えたか
まず、Orientでつくられた現在の見方を確かめる。
信号の例なら、「いまから渡り始める場面ではない」である。
2.どのような行動を選べたか
止まる、そのまま進む、走るなど、取り得た行動を考える。
3.その中から、何をすると決めたか
自分が実際に選んだことを言葉にする。
「今回は渡らずに待つ」がDecideに当たる。
DecideからActへ
信号の点滅を見て、「いまから渡り始める場面ではない」と捉え、「今回は渡らずに待つ」と決めた。
しかし、頭の中で決めただけでは、現実の動きはまだ変わっていない。
実際に足を止め、横断歩道の手前で待つのがActである。
次の記事では、同じ信号の場面を使いながら、決めたことを実際の行動に移し、その結果が次のObserveにつながる仕組みを見ていく。
まとめ
Decideとは、Orientで捉えた現在の状況をもとに、次に何をするかを決める働きである。
- Decideは、OrientとActの間にある
- Orientでつくられた状況の見方から、次にすることを選ぶ
- ボイドの図では、Decisionの下にHypothesisと記されている
- 基礎的には「現時点で次にすることを決める」と理解すればよい
- Orientが異なれば、同じObserveから異なるDecideが生まれる
- 状況が変われば、ObserveとOrientを更新し、決定を見直すこともある
現在の状況の見方をもとに、次にすることを一つ選び、行動へ渡す。それがDecideである。
次に読む
決めたことが、そのまま実行されるとは限らない。次はActを読み、決定と実際の行動を分けて考えよう。
- 次へ:Actとは?|決めたことを実際の行動に移す — 選んだ仮説を現実の中で試し、その結果から情報を受け取る働きを学ぶ。
- 復習:Orientとは?|意味づけがOODA全体を形づくる理由 — 自分の決定の土台になった、状況の見方を振り返る。
参考資料
- John R. Boyd, The Essence of Winning and Losing, “The OODA ‘Loop’ Sketch,” 1995.
- John R. Boyd, edited by Grant T. Hammond, A Discourse on Winning and Losing, Air University Press, 2018, Appendix “The OODA Loop.”
本記事では、Decideの基本的な働きを初めて学ぶ人が理解できるよう、ボイドの図に示されたDecision(Hypothesis)の関係を、歩行者用信号の例に置き換えて簡略化している。