OODAループは、Observe、Orient、Decide、Actを順番に回し、行動の結果をもう一度Observeへ戻す円として描かれることがあります。
この簡略図では、情報の流れは一方向です。
しかし、ジョン・ボイドの最終図には、複数のFeedbackとFeed Forwardが描かれています。
OODAは、最後まで進んでから最初へ戻るだけではありません。結果を受け取る流れと、次に起こることを見越して先へ働きかける流れが、同時に動いています。
フィードバックとは何か
フィードバックは、行動や変化によって生じた結果を受け取り、現在の理解や方法を修正する働きです。
たとえば、会議で新しい説明方法を試したとします。
- 質問が減った
- 説明時間が短くなった
- 一部の人には伝わらなかった
- 想定外の問い合わせが増えた
これらは、Actionの結果として環境から戻ってくる情報です。
OODAでは、結果を「成功」「失敗」と評価して終わりません。
何を予想し、実際に何が起き、どの前提が合っていたか、どこにずれがあったかを見ます。その情報が、次のObserveとOrientを変えます。
フィードバックは最後に一度だけ起きるのではない
最終図では、環境との相互作用からOrientへ戻る流れだけでなく、DecisionやActionに関係する複数の戻りの線が示されています。
これは、振り返りが最後の反省会だけではないことを意味します。
行動している途中にも、次のような情報が戻ってきます。
- 相手の表情が変わった
- 予定より時間がかかっている
- 前提にしていた情報が古いと分かった
- 小さな操作に対して想定外の反応が出た
その時点で、観察や意味づけを更新できます。
OODAは、計画、実行、終了、反省という区切られた手順ではなく、動きながら修正する過程です。
フィードフォワードとは何か
フィードフォワードは、現在得ている情報やOrientを、次の判断や行動へ先回りして送る働きです。
まだ結果が確定していなくても、これまでの経験や現在の変化から、次に起こり得ることを見越します。
たとえば、雨雲が近づいていることに気づいたとします。
雨が降ってから傘を取りに戻るのは、結果を受けた対応です。
一方、空の変化、予報、移動時間、自分の予定を結びつけ、出発時に傘を持つのは、先を見越した働きです。
未来を正確に当てることが目的ではありません。
起こり得る変化を想像し、準備し、必要なら早めに行動を変えられる状態をつくることが目的です。
最終図のフィードフォワード
ボイドの最終図では、ObservationsからOrientへ、OrientからDecisionへ、DecisionからActionへ向かう流れにFeed Forwardが示されています。
ただし、これは単なる情報の受け渡しではありません。
ObserveからOrientへ
観察した事実を送るだけでなく、「何が変化しそうか」「どの情報が重要か」という気づきをOrientへ持ち込みます。
OrientからDecisionへ
過去の経験、文化、新しい情報、分析と統合によってつくられた見通しから、次に試す仮説を準備します。
DecisionからActionへ
決定を伝えるだけでなく、どの結果を期待し、何が起きたら変更するかという予測をActionへつなぎます。
この流れがあることで、行動は単なる命令の実行ではなく、仮説を確かめるテストになります。
予測と決めつけは違う
フィードフォワードを使うときに注意したいのが、予測を事実へ変えてしまうことです。
「次はこうなる可能性がある」と考えることと、「必ずこうなる」と決めつけることは違います。
予測を固定すると、予測に合う情報だけを見つけ、合わない変化を見落としやすくなります。
よいフィードフォワードには、次の二つが必要です。
- 先を見越して準備する
- 現実が違えばすぐに予測を修正する
未来への見通しと、現在への開かれた観察を同時に持ちます。
フィードバックだけでは遅くなる場面
結果が出てから修正するだけでは、間に合わない場面があります。
たとえば、事故防止、医療、安全管理、災害対応では、重大な結果が起きてから学ぶだけでは不十分です。
そこで、次のような先回りが必要になります。
- 失敗しやすい条件を事前に探す
- 変化を早く知らせる兆候を決める
- 中止・変更の基準を持つ
- 複数の選択肢を準備する
- 誰が何を観察するか分担する
これは未来を支配することではありません。不確実性があることを前提に、対応可能性を増やすことです。
フィードフォワードだけでも危険になる
一方で、予測と準備ばかりを増やし、現実からのフィードバックを受け取らなければ、計画が独り歩きします。
次の状態は要注意です。
- 予定どおり進めることが目的になっている
- 現場の違和感が計画へ反映されない
- 悪い情報を報告しにくい
- 成功条件だけあり、中止条件がない
- 予測が外れても説明を変えて正当化する
フィードフォワードは、フィードバックと組み合わさって初めて機能します。
日常で使う三つの問い
フィードバックとフィードフォワードを、難しい用語のまま使う必要はありません。
行動の前後に、次の三つを確認します。
行動前
何が起きると予想しているか。
行動中
予想と違う兆候は出ていないか。
行動後
実際の結果から、次の見方と行動をどう変えるか。
この三つだけでも、行動は「やって終わり」から「予測して、試して、学ぶ」へ変わります。
チームでは予測と結果を共有する
チームでOODAを使う場合、結論だけを共有しても、それぞれのOrientはそろいません。
短くても、次を共有します。
- 現在見えている事実
- これから起きると考えていること
- その見通しの根拠
- 何が起きたら変更するか
- 実際に起きた結果
予測を先に共有しておけば、結果が出た後に「最初から分かっていた」と記憶を書き換えることも減らせます。
また、別の人が予測と違う兆候を観察したとき、早く声を上げられます。
二つの流れがOODAを学習に変える
フィードバックは、過去の結果を現在へ戻します。
フィードフォワードは、現在の理解を未来の判断と行動へ送ります。
二つは反対方向の働きですが、対立するものではありません。
予測して動き、結果を受け取り、見方を更新し、次の変化を見越す。その往復によって、OODAは学習と適応の過程になります。
OODAループが単純な円ではないのは、私たちが未来を想像しながら動き、同時に現実から修正され続けるからです。
原典・参考資料
- John R. Boyd, The Essence of Winning and Losing, 28 June 1995. OODA Loop SketchおよびInsights。
- John R. Boyd, Conceptual Spiral, August 1992.
内部リンク候補
- OODAループ最終図の読み方
- OODAループはなぜ単純な円ではないのか
- Decideとは 決定は仮説である
- Actとは 行動は仮説の検証である
- 振り返りでOODAを学習につなげる